腎臓病のわんちゃんための手作りおやつ。豆乳とバナナを使ったパンケーキです。
おやつは栄養学的には絶対に必要なものではありませんが、飼い主さんとわんちゃんとの感情的なコミュニケーションツールになっていることが多く、生活を豊かにするという意味では大切なものです。
しかし、腎臓病の子の場合、おやつの種類や量によっては、療法食の治療効果が損なわれる可能性があるため、十分に注意しなければなりません。
腎臓病の子でも安心して食べられるおやつが欲しい。そんな声に応えるため、今回は手作りおやつのレシピをご紹介します。
材料
小麦粉(全粒粉) | 80g |
---|---|
鶏卵 | L1個 |
バナナ | 40g |
調整豆乳 | 80ml |
黒糖 | 10g |
はちみつ | 15g |
バター | 10g |
炭酸カルシウム | 1cc |
重曹 | 0.5cc |
全粒粉がないときは通常の小麦粉(強力粉または薄力粉)でもOKです。
低脂肪にしたいときはバターを使用せず、生地に白糖20gを加えてください。
大豆にアレルギーがある場合は、豆乳のかわりにココナッツミルク30mlと水50mlでも作ることができます。
作り方
①バナナ、豆乳、卵、黒糖をミキサーにかけます。
②小麦粉に、炭酸カルシウムと重曹をふるいにかけて混ぜ込みます。全粒粉はふるいにかけるとブランが分離してしまうので、そのまま使用します。
③①と②をまぜ、泡だて器で手早く混ぜます。
④テフロン加工のフライパンまたはホットプレートで焼きます。焼き油は使用しません。両面を弱火でじっくりと焼いていきましょう。
⑤バターを電子レンジで溶かし、はちみつを加えてよく混ぜ、はちみつバターにします。
⑥焼きあがったパンケーキに、はちみつバターを塗ったら完成です。ベタつくのが嫌なときは③で生地に練りこんでから焼いてもOKです。
栄養組成
(単位:g/1000kcal) | 腎臓病用療法食 | このレシピ |
---|---|---|
タンパク質 | 35〜50 | 40 |
脂質 | - | 37 |
カルシウム | - | 1.0 |
リン | 0.5~1.25 | 0.8 |
カリウム | 1.0~2.0 | 1.4 |
ナトリウム | 0.2~0.75 | 0.7 |
このレシピの計算上の総カロリーは約510kcalです。
今回は"おやつ"という位置づけなのでサプリメントを使用していません。主要な栄養素については療法食にほぼ等しいものになっていますが、単独で主食とするには栄養バランスは完全ではありませんのでご注意ください。なお、このレシピは糖分が多いため糖尿病の子には向きません。
小麦全粒粉
全粒粉は精白していない小麦を挽いたもので、"胚芽"や"ふすま"がそのまま含まれている小麦粉です。白い小麦粉と比べ食物繊維やビタミン・ミネラル類を豊富に含んでいます。リンの含有量も多い点には注意が必要ですが、全粒粉に含まれるリンはフィチン酸という消化吸収率の低い形態が主であるため、実際にはそれほど大きな影響はないかもしれません。
バナナ
シュガースポットが出るくらいに完熟したものが理想的です。バナナには食物繊維やオリゴ糖も含まれており、整腸作用が期待できます。カリウムが豊富に含まれるため、カリウムの制限が必要な場合は与えすぎないように注意しましょう。
黒糖
黒糖は精製された白糖よりも多くのミネラル成分を含んでいます。特に鉄分が豊富なので貧血対策にも有効かもしれません。ただし、カリウムも豊富に含んでいるため、カリウムの制限が必要な場合はカリウムを含まない白糖に切り替えましょう。
重曹
重曹(じゅうそう)は炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)という物質です。加熱すると炭酸ガスを発生するため、様々な焼き菓子で生地をふっくらさせる目的で使用されています。同じ目的で使用されるものにベーキングパウダーがありますが、製品によってリンを含むものがあるため念のため使用を避けています。重曹は食塩と同じようにナトリウムを含んでいる点にも注意が必要ですが、分量をきちんと守れば問題はありません。アルカリ性の物質であるため、腎臓病で酸性化した体を中和する作用も期待できます。当然ですが食品として販売されているものを使用しましょう。
おわりに
習慣的におやつをもらっていたわんちゃんにとって、突然おやつをもらえなくなることは強いフラストレーションを生み出します。これは飼い主さんにとっても強いストレスとなり、耐えられずこっそりおやつをあげてしまう人もいます。これが治療の失敗につながることもしばしばです。
おやつは絶対にダメ!と言うのは簡単です。しかし、それでは結果としてわんちゃんも飼い主さんをも不幸にしてしまう可能性があります。
悲しいことですが、愛犬もいつかは虹の橋を渡ります。そのときに飼い主さんは「好きなおやつも食べさせてあげられなかった。」という後悔や、「先生の言うことを聞かずにおやつを食べさせたから…」という自責の念を感じてしまうかもしれません。
そんな涙はいりません。病気の子でも食べられるおやつがあれば、我慢する必要などないのです。愛犬と一緒に過ごせる最後の時間を、笑顔でいっぱいにしてあげましょう。微力ながらお力になれれば幸いです。
【免責事項】
紹介したレシピは、すべての腎臓病の患者さんに適したものであることを保証するものではありません。かかりつけの獣医師の指導のもとで使用してください。ご利用は自己責任でお願いします。無断転載はご遠慮ください。