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腎臓病・食物アレルギー対応手作り療法食|鯖&ポテト

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食物アレルギーと腎臓病を併発している子のための手作り食餌療法食(肉類、穀物アレルギーに対応)のレシピを紹介します。

わんちゃんの食物アレルギーは、かゆみを特徴とする皮膚炎症状、あるいは下痢などの消化器症状を示します。一般的な腎臓病用療法食は食物アレルギーのことを考慮していないため、食物アレルギーの子が腎臓病になったとき、食餌に困ることがよくあります。

このページではチキンやビーフなどの肉類全般、そして米、麦、トウモロコシなどの穀物全般に対する食物アレルギーに対応した、腎臓病用の手作り療法食を紹介します。主要な食材は魚(サバ)、鶏卵、じゃがいもです。これらにアレルギーのある子は使用できない可能性がありますのでご注意ください。

 

材料

サバ水煮缶詰                      80g
鶏卵                                    L2個
じゃがいも                  900g(可食部) 
キャノーラ(菜種)油        小さじ5
野菜類                         合計100g程度まで
昆布                                     0.5〜1g  
炭酸カルシウム                   1g
マルチビタミン              成人1日量
マルチミネラル                   成人1日量
亜鉛                            成人1日量

作り方

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①じゃがいもは皮をむいてから、1cm角に切り、たっぷりの水で煮ていきます。簡単につぶれるくらいの柔らかさになるまで15〜30分ゆでていきます。ゆであがったら水にさらしておきましょう。分量は皮をむいた後の重さですので注意してください。

 

②サバ缶は太い背骨を外し、身の部分をほぐしておきます。缶詰に入っているスープは使いません。

 

③鍋に水100ml、サバ、キャノーラ油、昆布を入れて火にかけます。野菜を入れる場合は下茹でして細かく刻んだものをここで加えます。見本ではにんじんとブロッコリーを使っています。

 

④卵2個を溶き卵にして流し入れ、よくかき混ぜながら火を通します。生煮えにならないようにしっかりと加熱してください。粗熱をとってから、サプリメント類を粉にして加えよく混ぜます。

 

⑤ゆであがったじゃがいもは、よく水を切ってからマッシュポテトにします。

 

⑥すべての材料を混ぜ合わせたら出来上がりです。

 

栄養組成

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このレシピの栄養組成の計算上の推定値を示します。比較のために市販各社の腎臓病用療法食のデータをまとめたものを挙げておきます。

(単位:g/1000kcal) 腎臓病用療法食 このレシピ
タンパク質             35〜40 44
脂質                        45~50 43
EPA+DHA       1.2~1.9 1.9
カルシウム             1~1.5 0.9
リン                        0.5~0.9 0.6
カリウム                1.5~2.2 3.5
ナトリウム            0.3~0.9 0.5

 総カロリーは約1000kcalです。なお、野菜はあえて計算に入れていませんが、普通の量では栄養バランスを崩すほどの影響はないので問題はないと考えられます。

いもを使ったレシピではカリウム量が多くなりがちです。高カリウム血症が問題になるようであればこのレシピの使用は控えてください。

 

サバ缶

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今回のレシピではサバの水煮缶詰を使用しました。缶詰は魚が最も新鮮な状態で加工され、しかも缶は酸素を透過しないため品質も劣化しないという優れものです。ある意味スーパーで鮮魚を買うよりも新鮮な魚が手に入ります。

鮮魚の最大の欠点は供給が不安定であることです。漁獲量は季節や天候、生物資源量にも左右されるため、いつでも手に入るとは限りません。その点、缶詰は保存性が向上しているため、比較的安定的に入手できるのが強みです。

注意点としては塩分が多いこと。水煮缶を使う場合は、スープは全て捨てて身だけを使うこと。他に塩分を含む調味料は使用しないのがポイントです。

骨がそのまま入っているのも缶詰の特徴です。柔らかいので食べることはできますが、腎臓病のときはできるだけ骨を外してください。骨はカルシウムとリンの結合体なので、腎臓病で制限の必要なリンを多く含んでいるからです。

青魚にはEPADHAなどのオメガ3脂肪酸が豊富に含まれているため、フィッシュオイルのサプリメントを使う必要がありません。サバ以外の魚では、イワシなどでも代用できますが、ツナ缶はオメガ3脂肪酸が少ないのであまりおすすめしません。

 

キャノーラ油

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キャノーラ(菜種)はアブラナ科の植物であり、アレルギーを起こしにくい食材であるとされています。

オメガ6系脂肪酸リノール酸をほどほどに含んでおり、オメガ3脂肪酸を豊富に含む魚と一緒に使うことで、適切な脂肪酸のバランスをとることができます。

 

昆布

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昆布は必須ミネラルであるヨウ素を供給するために入れています。昆布のヨウ素含有量は他の海藻と比べても桁違いに多いので、使用量はほんのわずかでOKです。

市販の昆布茶が使いやすくおいしいのでよく使うのですが、今回のレシピでは昆布茶を使うと塩分過剰になってしまいます。食塩の添加されていない粉末昆布を使うか、とろろ昆布かおぼろ昆布をひとつまみ入れてあげるだけでも十分です。もしご家庭で昆布だしを取る習慣があれば、出汁を使うのもいいですね。

昆布にアレルギーのある子はまれであると考えられますが、もしも昆布を避けたい場合は、乾燥ひじきを粉砕したものを小さじ1杯程度加えてあげるか、アルギチャンプ®︎やプロデンデンタルケア®︎などの海藻サプリメントが利用できます。

 

野菜

今回の見本ではアブラナ科ブロッコリーと、セリ科の人参を使用しました。どちらも比較的アレルギーを起こしにくい食材であるとは考えられますが、ヒトではアレルギーの報告がないわけではありません。

野菜は栄養バランス的に必須の材料ではないので、最初から入れるのは避けたほうがいいかもしれません。野菜以外の材料でアレルギー症状が起きないことを確認してから、一種類ずつ慎重に追加してみることをおすすめします。

アレルギーのことだけを考えるならば、必ずしも加える必要はありませんが、野菜には食物繊維や抗酸化物質など様々な健康効果の高い栄養素が含まれています。無理のない範囲でできるだけ使っていきたい食材です。

 

サプリメント

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ビタミンやミネラルは通常、短期間で欠乏するものではないので、一般的な手作り食(またはアレルギー食)では、最初はサプリメントを加えなくても大きな問題はないと考えられます。しかし腎臓病となると話が変わってきます。特にカルシウムはリン代謝に影響するため必ず最初から添加するようにしましょう。炭酸カルシウムがアレルゲンになる可能性はほぼありません。

日本で販売されている人用のサプリメントは食品として法律の規制を受けているので、アレルギー物質を表示する義務があります。原材料をよく確認し、アレルゲンを含まない製品を選んであげてください。

 

おわりに

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今回のレシピは、以前紹介したサーモン&ポテトにかなり近いものになっています。サーモン&ポテトもそれなりに食物アレルギーに対応したものではありましたが、かなりの手間がかかるのが欠点でした。

食餌療法はわんちゃんの毎日の治療。そして、それを手作りするのは飼い主さんの毎日の仕事になります。できるだけ楽に作れる時短レシピであることも、長く続けるためには重要なファクターです。過去のレシピにはこの観点がやや欠けていたことを反省し、今後磨きをかけていきたいと思います。

 

【免責事項】

紹介したレシピは、すべての腎臓病および食物アレルギーの患者さんに適したものであることを保証するものではありません。かかりつけの獣医師の指導のもとで使用してください。ご利用は自己責任でお願いします。無断転載はご遠慮ください。