療法食では太ってしまう、たくさん食べたいわんちゃんのために。手作りごはんがお腹いっぱいの幸せを提供します。
腎臓病用の特別療法食を食べているわんちゃんで、よく聞く悩みが"太ってしまう"ことです。もともと食欲の旺盛な子で、初期の腎臓病でまだあまり症状が出ていないケースでは珍しくありません。特別療法食は、より進行した腎臓病を視野に作られているので、カロリーも高く作られているものが多いからです。
単純に量を少なくすれば済む話ではあるのですが、でも、それってかわいそうですよね?食餌療法としての機能と、「食べたい」という欲求を満たしてあげること。両立することはできないものでしょうか?
手作りごはんならば可能です。今回は、大食いわんちゃんのための、たっぷり食べられる低カロリーレシピをご紹介します。
材料
とり胸肉(皮なし) | 150g |
---|---|
鶏卵Lサイズ | L1個 |
ごはん | 350g(1合) |
さつまいも | 150g |
こめ油 | 小さじ2 |
フィッシュオイル(1g) | 5カプセル |
野菜類 | 合計200g程度まで |
昆布茶 | 1g |
炭酸カルシウム | 1g |
マルチビタミン | 成人1日量 |
マルチミネラル | 成人1日量 |
亜鉛 | 成人1日量 |
このレシピでは油を減らし、その分のカロリーをさつまいもで置き換えています。油大さじ1杯分のカロリーは、さつまいも100g分に相当するので、大幅に量を増やすことができます。また、野菜類を増やすことでも、かさ増しをねらっています。
さつまいも
いも類はご飯の代わりに炭水化物源として利用することができます。中でもさつまいもは甘みが強いため、わんちゃんの大好きな食材の一つです。食物繊維も豊富で、便通を良くする作用も期待できます。
ただ、やや消化しにくいきらいがあるので、十分に加熱するようにしましょう。また、調理段階でつぶすなどして、形が残らない程度に細かくしておくことをおすすめします。フードプロセッサーを使うのもおすすめです。皮はむいても、むかなくてもOKです。紫色の色素はアントシアニンというポリフェノールの一種で、抗酸化作用も期待できます。
こめ油
高カロリータイプのレシピではひまわり油を推奨していましたが、今回はこめ油を採用しています。油は種類によって脂肪酸の組成が異なっているからです。
ひまわり油(オレインリッチ)はその名の通りオレイン酸を豊富に含んでおり、必須脂肪酸であるリノール酸が少ない油です。そのため、使用量を減らした場合、リノール酸が不足してしまう可能性があります。一方、こめ油はリノール酸を多く含んでいるため、比較的少ない量で要求量を満たすことができます。また、ビタミンEも多く含んでいます。
他に特徴的な成分としてγ(ガンマ)-オリザノールという機能性成分が含まれており、抗酸化作用、抗炎症作用、抗高脂血症作用、抗アレルギー作用などが期待できるようです。
作り方
①さつまいもは電子レンジで加熱して下ごしらえしておきます。水を含ませたキッチンペーパーで包んでから、さらにラップで包み、500wで5分ほど加熱します。加熱時間はいもの大きさで加減してください。ホクホクの焼き芋状態にしておきましょう。
②ブロッコリーを使うときは、塩は使わず下ゆでしておきます。みじん切りにするか、フードプロセッサーで処理しておきます。にんじんはすりおろしておきます。
③鳥むね肉、野菜、こめ油、こんぶ茶を水1.5カップとともに火にかけます。5〜10分ほど煮込みます。
④火が通ったら溶き卵を回し入れ、一煮立ちしたら火を止めます。
⑤ごはんと、下処理したさつまいもを加えてよくまぜます。
⑥冷めてからフィッシュオイル、サプリメント類を加えます。
栄養組成
(単位:g/1000kcal) | 特別療法食 | このレシピ |
---|---|---|
タンパク質 | 35~40 | 52.5 |
脂質 | 45~50 | 24 |
EPA+DHA | 1.2~1.9 | 1.6 |
カルシウム | 1~1.5 | 0.8 |
リン | 0.5~0.9 | 0.6 |
カリウム | 1.5~2.2 | 1.4 |
ナトリウム | 0.3~0.9 | 0.4 |
このレシピのカロリーは約990kcalです。(野菜を除く)
初期の腎臓病に適した栄養組成に調整しているため、通常の(進行した)腎臓病用のレシピよりもタンパク質の量を多く設定しています。タンパク制限をしたくない心臓病の子にも適しています。また、低脂肪に調整しているため、膵炎など脂肪の制限が必要な場合にも使用できます。
おわりに
今回は腎臓病でもたくさん食べたいわんちゃんのための、低カロリーレシピをご紹介しました。低カロリーというと誤解されるかもしれませんが、これはあくまで食事の量(かさ)を増やすことが目的で、ダイエットを意図したものではありません。このレシピで減量を試みることは、必要な栄養が不足するリスクがあるのでおすすめできません。
腎臓病では「やせさせない」ことが非常に重要です。もし、食欲が落ちて食べきれなくなってきたときや、意図せず体重が落ちてきたときは、迷わず通常カロリーのレシピに変更してください。
もともと食欲旺盛な子は、腎臓病が進行していても、ギリギリまで食欲が落ちないことがあります。食欲があるから大丈夫、と油断していると、気づかないうちに病状が進行してしまっていることもあるので注意してください。見た目には元気そうに見えても、動物病院での定期チェックは必ず受けるようにしましょう!
【免責事項】
紹介したレシピは、すべての腎臓病の患者さんに適したものであることを保証するものではありません。かかりつけの獣医師の指導のもとで使用してください。ご利用は自己責任でお願いします。無断転載はご遠慮ください。
(2020.3.8 記事・レシピを変更しました。)