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腎臓病の犬のための手作り食|食が細い子のために

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こんなにたくさん食べられない!食が細いわんちゃんのためにボリュームを落とした腎臓病用手作り食のレシピを紹介します。

手作りごはんはドライフードと比べると水分が多いため、同じカロリーで比較すると食事の量(かさ)が多くなる傾向があります。そのため、もともと食が細い子であったり、腎臓病の影響で食欲が低下したりしているときには、必要な量を食べきれない場合もあると思います。今回はそんな子のために、少ない量でも栄養をとれるように考案したレシピをご紹介します。

 

材料 

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かつおぶし                                10g
とり胸肉(皮なし)                    60g
鶏卵                                  L2個
ごはん                                        175g(1/2合)
粉飴(マルトデキストリン)    65g
ひまわり油オレインリッチ       大さじ2と小さじ1
フィッシュオイル(1g)       5カプセル
野菜類                                      合計100g程度まで
減塩しお(塩分50%)          2cc
昆布                                          0.5~1g
炭酸カルシウム                        1g
マルチビタミン                        成人1日量
マルチミネラル                        成人1日量
亜鉛                                         成人1日量

見本ではにんじんとキャベツを使用しています。

 

 マルトデキストリン

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粉飴(マルトデキストリン)は腎臓病の人や、持久系のアスリートの方がエネルギー補給のために使うもののようです。ブドウ糖が鎖状につながった構造をしており、デンプンを分解することで得られます。デンプンは水に溶けませんが、マルトデキストリンは少量の水にも溶ける性質があります。この性質を利用すればかなり食事の量を少なくすることができます。マルトデキストリンは純粋な炭水化物で、タンパク質やミネラルを含んでいないため、腎臓病でも使いやすい素材です。

 

かつお

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かつおぶしの風味を好むわんちゃんはとても多いです。かつおぶしのうまみ成分はイノシン酸などの核酸が主であるとされており、これは犬の味覚でも感じることが出来ると考えられています。食欲が落ちているときには、味にも気を使ってあげる必要がありますので、かつおぶしはとても魅力的なアイテムです。

 ただし、かつおぶしは非常に多くのタンパク質を含んでいて、ほとんどタンパク質の塊と言ってもいいくらいの食材です。これは食事量を減らしたいときにはメリットでもありますが、その反面、わずかな量でもタンパク質の過剰摂取になりやすいので、正確に量を計る必要があります。削り節のパックは便利ですが、パッケージに表記の量は必ずしも正確ではないかもしれないので、念のため自分でも計っておくことをおすすめします。

 

作り方

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①野菜類は細かく刻み、電子レンジで柔らかくなるまで加熱しておきます。通常は鍋で煮ることが多いのですが、今回は食事量を減らすために水分も少なくしているため、鍋だと水分が飛んでしまいます。

 

②鍋に水100ml、①で下処理した野菜、ひまわり油、皮を外して細かく刻んだとり胸肉、減塩しお、昆布をいれて火にかけます。肉に火が通ったら溶き卵を流しいれてよくかき混ぜ、ひと煮立ちしたら火を止めます。肉や卵などのタンパク質は加熱しすぎると消化率が低下するため、火が通るぐらいにとどめておきましょう。

 

③火を止めたらかつお節と粉飴を加えてよく混ぜます。

 

④粗熱をとってからフィッシュオイルその他のサプリメント類を加えます。錠剤のサプリは粉にしてからいれましょう。フィッシュオイルに含まれるオメガ3脂肪酸や、ビタミン類には熱に弱い性質があるので冷めてから加えるのがポイントです

 

⑤最後にごはん1/2合分を混ぜあわせて完成です。

 


栄養組成 

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このレシピの計算上の栄養組成をまとめます。参考のため、各メーカーから発売されている犬腎臓病用特別療法食のデータをまとめたものを挙げておきます。

 

単位(g/1000kcal) 特別療法食 このレシピ
タンパク質         35~40 40
脂質               45~50 49
EPADHA         1.2~1.9 1.7
カルシウム          1~1.5 0.7
リン                   0.5~0.9 0.5
カリウム             1.5~2.2 1.2
ナトリウム          0.3~0.9 0.7

このレシピのカロリーは約1000kcalです。(野菜を除く)


おわりに 

このレシピは食事量が少なくなるように設計しているので、食の細い子でも必要カロリーを摂取しやすいと思います。

ところで、食欲が落ちているときは、同じものを与えていると飽きてしまい、最初は食べていたものでも途中から食べなくなってしまうことがあります。これは病気による食欲不振のときによく見られる現象で、決して「ぜいたく病」ではありません。手を変え品を変え、次々と新しいものを与えなければならないことも珍しくありません。「いらないなら食べなくていい!」という厳しい対応は、健康時ならともかく、腎臓病の子にとっては寿命を縮める結果になります。食べることは生きること。命をつなぐため、おしみのない愛情を注いであげましょう!

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【免責事項】

紹介したレシピは、すべての腎臓病の患者さんに適したものであることを保証するものではありません。かかりつけの獣医師の指導のもとで使用してください。ご利用は自己責任でお願いします。無断転載はご遠慮ください。

 (2020.2.29 記事・レシピを更新しました)